旅記

生存報告あるいは将来的な墓標として

こういうのこういうの

さて、トルコについてホテルにたどり着き夕食をとってきたのだが、久しぶりに楽しい若者一人旅という感じだったので、記しておく。

 

先日は全然知らないメトロ駅の近くの全然知らない大きなホテルに泊まってみようと言う。1人企画でペンディクに泊まっていたのだが、今回はイスタンブールのアジア側繁華街カドゥキョイ Kadıköyの Nüzhet Efendi Skあたりのホテル街にて宿を取っていた。エクスペディアで上のほうに上がってきたのを適当に取ったのだが、間違って2人分で予約していたらしい。今回は本当に予約の間違いが多くて情けない。まぁ部屋料金なので値段は変わらないと思う。

ホテルの部屋はそこそこ清潔ではあるが場末のモーテルという感じで、バスルームに入ると換気扇の蓋が一部落ちて転がっていた。他の部屋の音も結構聞こえるようで、シャワーやドライヤーの音がはっきり聞こえた。近所のミュージッククラブの音漏れも激しい。たまたま部屋が悪かったんだろうか寝付けるだろうか。誰向けのホテルなんだろう、国内旅行中のトルコ人が泊まるんだろうか。

同じ値段だったら、もうちょっと素敵なホテルがこの周辺にはあるようだ。次回はそういうところを探してみよう。

 

そういえば、メトロ駅からホテルまで乗ったタクシーはまた最低料金に達しなかったので、90リラ払う。夜間料金なのか、都会料金なのか20リラ高い。100円20リラなので500円が最低料金、日本と変わらない。

 

夜の8時前に空港に着いたのに、空港を出たのは9時半、ホテルには11時前に着いた。とてもお腹が空いていたので、チェックインして部屋に荷物を置いたら、すぐさま外に食べ物を探しに行く。トルコ語しか話さないホテルのボーイにスープを出す店はあるか聞いたら、何番目かの道を右に曲がったところにあるサライという店を教えてくれた。途中が聞き取れなかったので、とりあえず知ったかぶりをして、適当に右に曲がったところで、スープ屋を探すことにした。

 

しかし、2本目の道を曲がってウロウロしていたら、途端に道に迷った。本当に方向音痴なのを久しぶりに思い出した。

そのエリアは少し古くてごみごみしているので、携帯を見ながら外国人の女1人で立ち止まっているのもなかなか気が引けるので、とりあえず早足で歩き回る。

すると、目の前の小さな小道にçorbaの電光サインがあるではないか。掘っ立て小屋のようなその店に近づいてみる。店を覗くが誰もいない、と思ったら、隣の店からベストを着た初老の男性が出てきた。

スープの看板を出していて営業中の店なんだから当たり前だとは思いつつ、スープありますかと聞いたらあると言うので、店に入る。

4種類スープがあって、名前の聞き取れたものを頼む。

スープはすぐ出てくる。いつもはパンと一緒に出てくるのだが、パンを机に置かれなかったのでパンはありますかと言ったら、おじさんは笑って、「スープ屋でパンが出てこないなんてことあるわけないじゃないか。今持ってくるところだよ」と言った(たぶん)。

 

ごめんなさい外国人だからわからなくてと言うと、ウズベク人か、と聞かれる。日本人だと言うと、おじさんはいたく喜んでHarika!(素晴らしい)と手を挙げた。

 

朝7時からろくなものを食べていなかったので、暖かくて塩気のあるスープはとてもとてもおいしかった。レンズ豆のスープを飲み干し、エゾゲリンスープもおかわりする。

 

おじさんは、トルコで何してるんだ、旅行か学生かと聞く。今回はドイツで仕事があったんですが、トルコに来るのは3回目ですよと答える。(3回目ではないのだが、なぜか3回と言ってしまった。)

旅行でどこに行ったのかと聞くから、アンカラとかカッパドキアとかトラブゾンとかと答えるとおじさんはまた顔をほころばせる。たどたどしいトルコ語を頑張ってしゃべるから、またそれがいいんだろうか。

 

Google翻訳のサポートを得つつ、そうやって会話をしていると、他の客が店に来る。何やら店の前に看板も出ていないものを頼んだらしい。おじさんは小走りにキッチンに行って何かを焼き始めた。

おじさんはなかなかキッチンから出てこない。私はスープを食べ終わったので、そろそろ帰ります、おいくらですかと聞く。

 

するとおじさんは忙しそうにしながら、チャイを、チャイを飲んでいかんか〜?と言ってくれたので待つことにする。人に温かい気持ちで出してもらう紅茶ほどうまいものはない。

 

後から来た客に食事を出し終えると、おじさんは私にチャイを持ってきてくれた。久しぶりに見た、この流線形のチャイグラス。

お茶をうまうまと飲んでいると、おじさんは何やら皿を持ってきて私の前に置いた。いそいそと、小麦粉の薄いdürüm生地をめくる。さっきの客の注文したもののお裾分けらしい。

心の中で、「えええ〜、いいんですか〜??」と言いながらも、その言い方がわからないので、とりあえずお辞儀をしてニコニコしながらありがとうございますと言う。そこには少し、新鮮な本物のお辞儀を見たら嬉しかろうと言う下心があった。

 

さて、実際に食べてみよう。小麦粉の薄い生地の上に、みじん切りの玉ねぎと生のイタリアンパセリ、そしてクミンと塩がかかったダイス状の肉が載っていた。食べてみると、どうやらレバーらしい。

 

レバーにはクセがなかったので、鶏肉ですかと聞いたが、子羊らしい。子羊のレバーなど食べることがないから、面白い。

 

この料理を何と言うのですかと聞いたら、mayasız hamurと言った気がするが、検索してみたら全然違う写真が出てきたから、実際のところはよくわからない。

 

おじさんはメニューの提供が一段落したらしい。私のテーブルのほうにまたニコニコと戻ってきた。「お腹いっぱいです、ありがとうございます」と言うと、お腹いっぱいか!!それはよかった!とまた大喜びする。そして自分のスマートフォンを取り出したおじさんに、お腹いっぱいか!!とそのままのテンションで、写真を撮られた。それを見せてくれたが、ぶれた写真にへにゃへにゃ笑う私が写っている。そのうち家族や知り合い向けの話のネタになるんだろう。その用途だけにしてもらえると助かる。

 

スープ2杯で100リラを支払い、またありがとうございましたとお礼を言って店を出た。深夜にもかかわらず、軒先には10人ほどの男たちがいて、食事をほおばっていた。アジア側イスタンブールの地元住人たちは、飲みに行った帰りにこういうところで〆るってことだろうな。

 

入管でめちゃめちゃ疲れたが、夜ご飯で一気に楽しくなって、良かった。

こういう旅がいいんだよ。こういう旅が。