旅記

生存報告あるいは将来的な墓標として

言葉の通じない場所を求めて2

インターネットに接続したらちょうど日本に置いてきた伴侶からメッセージが入っていたので電話をかける。日本とトルコは6時間の時差である。かなり遅いはずなのにまだ仕事をしているらしい彼は、電話をとりがてら散歩に行こうと立ち上がったらしい、潜めた声のあとに引き戸の音がした。

 

私が頻繁にふらりと1週間以上留守にするので、申し訳ないなと改めて思う。毎日朝届くランダムなメッセージbotでも作ろうかと思っていたのに、そんなことすっかり忘れていた。暇になったらやろう、と思い続けて、ついには暇になることはないのだろう。何もすることがなくなったら喜んで布団に飛び込み何もせずじっとしている性分なのに、暇になったらという条件付けは本当にやめたほうがいい。

 

話しながら近隣情報をGoogleマップで探す。するとハマムがあることに気がついた。トルコの銭湯みたいなところである。トルコ入国5回目にしてまだ行ったことがなかったので、これに挑戦してみることにする。その近隣に食べ物屋もあるしいいだろう。

 

電話を終えて外出する。ホテルからハマムまで20分ほど、人通りが少ない道なので少し早足で歩く。その温浴施設はスポーツクラブに併設されており地下あった。少し入りにくいが旅の恥はかき捨てられるものであるので、頭を使わずとりあえず階段を降りることに注力する。

 

「ホシュギャルドヌズ」、いらっしゃいませと、こちらに気づいた中年女性が言う。ここでも、言葉が絶望的に通じない。最高である。「この人、トルコ語ダメ」とスタッフ間で情報が共有され、その度に全員困り果てた反応をする。そういうのを隠さないのがいい。トルコ語能力なしでハマムにくる人間が本当にいない地域にたどり着けて僥倖だ。私の知っていたイスタンブールは人口1400万人の巨大都市のほんの断片だった。

(ちなみにここまで書いてふと、イスタンブールは東京より人口が多いのかもと調べたら東京都市圏は3,780万人が集積しておりそれは世界一の人口らしく、己の無知を恥じた。旅をするのはいい。)

 

ハマムには行ったことがなかったが、ハマムが何たるかの知識はある。トルコリラをおろしすぎたと後悔していた私は、この機会に経験を最大化させようと、入場料+ケセ(垢すり)とマッサージ(マッサージ)の両方をつけた。500リラだった。現在、トルコリラ=4.85円なので、2500円程度か。

 

観光客が多いブルーモスク周辺ならいず知らず、地元民しか使わずわざわざ説明書きのサインも何もないハマムなので入浴着は貸してくれない。スポーツ下着を持ってきておいて正解だった。タオルと身体覆いの布は貸してくれた。

着替えようの小さな個室を指定され、入浴着になって鍵をかけ、ハマムの部屋に入る。

 

中にはハマムとサウナ、ミストサウナ、垢すり部屋があった。kahve masaji odasi という看板の部屋もあったが、コーヒーマッサージ室とはどういう意味だろう…。

 

ハマム施設にはプールが付いているところが多いらしい。ここにも15メートルほどの屋内プールがあった。親子が楽しそうにしている。水泳帽着用が必須みたいなので私は入れない。なんにせよ浄化槽機構などどうなっているのだろう、無いのかもしれないな。

 

しかしイスタンブールでのホームステイ時、学校にプールがないなとは思っていたのだがこういうことだったか。男女別プールがこんな地下にあるとは。それなりに古そうな施設だけれど、すごい。

 

 

(そもそもハマム自体の描写をしたいのだが、この部分は後で追記する)

 

 

 

帰りにハマム横の店でラフマジュンを買う。これは薄い小麦粉記事でチーズの載っていないピザみたいなものだ。

店に入ったら全員がこちらをみた。闖入してしまって申し訳ない。持ち帰り、というトルコ語が分からなかったのでジェスチャーで伝えると、パッケージな?と言われる。そう言うのか。語彙が一つ増えた。原初の方法で言語獲得をできるのは楽しい。

 

ホテルに戻って買ってきたラフマジュンを食べる。トルコの好きなところは、スープを頼めば必ずパンも付いてくるところだが、ラフマジュンを頼んだらサラダも付いてきた。

しかし、若いにいちゃんが微笑みながら持ち帰り用のパッケージを用意してくれたが、スープのスプーンはあってもサラダ用のフォークがついていない。

しかしどうせスーパーで食材を買い込んで済ませる場面が発生するのだからとカテラリーをひとセット持ってきていた。えらい。

それにて問題なく食事をとることができた。